ノーム
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男が走っている。早朝、スーツ、昭和通り、そして霧。いつもは乗り換えで使う秋葉原駅の改札を飛び出して、男は真っ直ぐに走る、走る。
革靴は湿る。呼吸をするのも難しい雲の中。何度も人や自転車にぶつかりそうになりながら、必死に目指したのは御徒町のショーウィンドウ。
光っている。翡翠が、フローライトが、アメジストが、オニキスが。内側に炎を抱いているかのような、じわじわとした光がゆらめく。濃霧の中で息づく石たち。
男は立ち尽くし、息を殺した。
革靴は湿る。呼吸をするのも難しい雲の中。何度も人や自転車にぶつかりそうになりながら、必死に目指したのは御徒町のショーウィンドウ。
光っている。翡翠が、フローライトが、アメジストが、オニキスが。内側に炎を抱いているかのような、じわじわとした光がゆらめく。濃霧の中で息づく石たち。
男は立ち尽くし、息を殺した。
ファンタジー
公開:19/10/30 21:39
更新:19/10/30 21:44
更新:19/10/30 21:44
森絵都さんの『ショート・トリップ』が大好きです。
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