変身願望

変身させる事が好きな若い女がいる。結婚式のドレス職人。作品を作る度、営業からきついダメ出しを受けるのが悩み。
ある時、魔女マシュマロなる物を知った。シンデレラに出てくる魔女になれるマシュマロらしい。店を訪ね、特別に見せて貰った。
「これで、あの魔女になれる。シンデレラをセレブにしたドレスを作れる」
女は金額を見た。途端、桁違いの高さに目を回した。が、欲しい。お金を貯める為、元々勤勉なのに輪をかけ、仕事に励んだ。
年月が経ち、努力が実る。いつしか女の作るドレスが、結婚式の流行を作るまでになっていた。今なら買える。その時に目にしたのが異業種の新商品、変身ベルトだった。みんなが変身したら、作ったドレスが売れなくなってしまう。
「私は平気」
実は女は、あの魔力を持つマシュマロを見ただけで、百年目の現役生活を迎えられていた。
「私は食べずに、ここまで来れた。まだ食べてないの。可能性にワクワクする」