恐るるにたらない子供たち

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あの頃、無機物の巨人に囲まれて育ったけれど、確かに人工の星空と虹があり、空間の歪に甘美な天宮図を描いた。まぶたに映る虚構は深い自然の神秘と恐ろしさとは無縁だったけれど、贋作は本物を超えて子供たちに夢を見させた。それは眠れる好奇心が行き場を求めてさまよう、紛い物を子守唄の代わりとした恐るるにたらない子供たちの精一杯の幻想の地図であった。
しかし、成長した子供らの見る発達した都市の輪郭はーー無教養と無性格の言葉と無骨なビル群ーー夢と不可思議の高鳴りを忘れて現実の一頁に埋もれようとしている。あらゆるものが激情の沸点を葬ってしまった、そうして崩壊を望む曖昧な心が片隅に残った。不明瞭な幸福と無色の混迷が増殖した都市に耐えられぬ者たちは今振り返る、世界の涯を知らなかった時を...贋作の奥に確かにあった己の想像力と甘い一切れの希望を。
その他
公開:19/10/30 17:32

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