Shibuya's Halloween Night

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ハチ公前広場には様々な仮装を楽しむ人たちで溢れかえっていた。
私はハロウィンが好きだ。お祭り騒ぎも嫌いじゃない。むしろ、一緒になって楽しむタチだ。一年に一度、どんなに不思議なことが起きても、そんなこともあるかもしれないと思わせてしまう夜。心が弾むのは仕方なかった。そうは言っても私は銅像。動かないことには慣れていたし、黙ったままでいることに苦痛を感じたこともない。私に出来ることは、せいぜい道行く人々の仮装した姿に点数をつけることくらいだ。クオリティは玉石混淆。私は本物志向の仮装が好きだった。本物と見分けがつかない仮装を見つけて、心の中で拍手喝采を贈っていた。

深夜になり、人がいなくなった頃、「今年も楽しかったね」とハチ公が戻ってきた。
「ああ。今年も誰にもバレなかったよ」
笑って応え、ハチ公の仮装を脱いだ。それから南口改札のほうへゴロゴロと転がると後ろから声がした。
「モヤイ、また来年!」
ファンタジー
公開:19/10/31 14:48
更新:19/10/31 15:06

のりてるぴか( ちばけん )

月の音色リスナーです。
ようやく300作に到達しました。ここまで続けられたのは、田丸先生と、大原さやかさんと、ここで出会えた皆さんのおかげです。月の文学館は通算24回採用。これからも楽しいお話を作っていきます。皆さんよろしくお願いします。

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