夏の音

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最近体調が優れないことが多い。夏から秋への季節の変わり目だし、そういうものや気圧の変化に私の体は敏感だ。
気晴らしに雑誌を読んでいると玄関のチャイムが鳴った。
宅急便のお兄さんから荷物を受け取ると、私は首を傾げる。
「何かしら、これ」
「音屋さんからのお届けっすね」
「音屋?」
判を押して部屋に戻る。梱包を解くと中の箱は正方形で、青空みたいな色をしていた。箱の蓋をそっと開けてみる。すると中から音が聞こえてきた。風鈴の涼し気な音、花火の迫力のある音、蝉の鳴き声、甲子園のベルの音、神輿を担ぐ力強い男達の声。
どれも過ぎ去った夏の音だった。夏が去って間もないというのに、とても懐かしく感じた。
最後に聞こえてきたのは赤ちゃんの泣き声。一体誰がこれを?
差出人は私だった。差出日は来年の8月。
「もしかして……」
私はそっとお腹に手を当てた。
来年は、今年とはまた違う夏の音を聞くことができる、きっと。
その他
公開:19/10/31 14:03
更新:19/10/31 16:19

深月凛音( 埼玉県 )

みづき りんねと読みます。
創作が大好きな主婦です。ショートショート小説を書くのがとても楽しくて好き。色々なジャンルの作品を書いていきたいなと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。
猫ショートショート入選『ミルク』
渋谷ショートショートコンテスト優秀賞『ハチ公、旅に出る』
ベルモニーPresentsショートショートコンテスト[節目]入賞『私の母は晴れ女』
ベルモニーPresentsショートショートコンテスト[縁]ベルモニー賞『縁屋―ゆかりや―』

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