その顔には無限の宇宙が広がっている

「俺はブスが好きなんだ。
よく言うだろ？　
美人は三日で飽きる。ブスは三日で慣れるって。
あれは正しくない。正しくは、『美人もブスに成るし、ブスも美人に成る』だ。

たとえ一時間だって美人の顔を見続けてみろ。
徐々に、ほんの些細な、例えば小さなホクロの位置とか、耳のかたちだとか。そういうどうでもいいところが気になりだす。
しまいにはゲシュタルト崩壊を起こし、とても美人とは言い難い代物になっていくものさ。

だけど、ブスは違う。
ブスは最初から「何か」が歪だ。鼻かもしれない、目かもしれない。ちょっぴり口ひげが生えている子さえいる。
でもな、ずっと見続けると、その部分がとても可愛らしく感じてくるんだ。その無限の可能性に心が惹かれていく。
ゲシュタルトは形成と破壊を繰り返し、宇宙が出来上がる様を思い起こさせる――」

敏腕美容整形外科医は、こうして神の如く宇宙を作り上げていった。