『お弁当』 TPS④

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子供の頃。
母は毎日お弁当を作ってくれていた。
そんなある日、私はうっかり弁当を持つのを忘れ、母が気付いて追いかけてきた。
その目の前でだった。
運送トラックに衝突されてしまいそれっきり。
翌朝、私は泣きながら母の最後の弁当を食べた。
私は悔やんだ。
私があの日弁当を忘れなければ……。
だが起こった事は変えられない。では私に出来ることは何だと自問した。
私は決意した。
母のような目に遭う人が少しでも減る工夫をしよう。その技術を考えよう。
そして半世紀以上。
宅配弁当を食べて現実を忘れまいと私は闘い、やがてそれは完成した。
TPS『テレポーテーションシステム』
これにより運搬、受け渡しの危険性は格段に減少。
加えて私は弁当デリバリーに転送の活用を密かに根回しした。
ああ。これで人々が弁当を安全に楽しく食べられる世の中になるといいなあ……。
私は年老いた手で、遠い日の弁当箱を優しく撫でた。
SF
公開:19/10/29 17:24

とーしろさん

はじめまして~。
いつだって初心で、挑戦者のこころでぶっ込みたい素人モノ書きです。

沢山の方々に支えられ、刺激を与えられ、触発されて今日ももちょもちょ書いております。
一人だけでは生み出せないモノがある。
まだ見ぬステキな創造へ、ほんの少しずつでも進んでいきたい。

ショートショートというジャンルに触れる切っ掛けをくださった、
月の音色と大原さやかさんを敬愛し感謝しております。

興味をもって読んでくださる全ての方にも、ありがとうございます~^^

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