渋谷キャットストーリー

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いい夜だった。ネオンが眩しくて星空なんて見えなかったけど。
「バルーンとネコは高いところに上るって決まってるんだ」
渋谷のネコが喋る。
「ついでに音楽もな」
TSUTAYAの大型ビジョンが口を開けると銀色の円盤がゲームのコインのようにザーッと出てきて空に浮かび、楽しげな音を降らせた。
「ついでにファッションもな」
マルキューの周りをカラフルな靴やバッグがビュンビュン飛ぶ。
「ついでにギャルもな」
路上を歩く女の子たちが宙に舞い、キャーと叫ぶ。
「それからバカもだ」
僕もギュインと空に浮く。
「君はキャットストリートのネコなの?」
「恐ろしくつまらない質問だ!」
渋谷のネコは憤慨した。
「私は時々ハチと入れ替わる。アレはいつも同じ姿勢で疲れるのだ。私がいても狸がいても誰も気付かない。だってハチがいるって信じ込んでいるから」
ネコは偉そうに言い、爪でヒゲを鳴らす。イカしたベースの音がした。
その他
公開:19/10/29 16:38
更新:19/10/29 17:49

むう( 地獄 )

人間界で書いたり読んだりしてる骸骨。白むうと黒むうがいます。読書、音楽、舞台、昆虫が好き。松尾スズキと大人計画を愛する。ショートショートマガジン『ベリショーズ 』編集。そるとばたあ@ことば遊びのマネージャー。

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