モヤモヤ モヤイ像

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「明日の朝、ハチ公前で待ってる」
「うん!」
ミヨちゃんとケンくんは、デートの約束をして別れました。

でも少し歩くと、
「あれぇ、どこだっけ?」
ミヨちゃんはすっかり約束の場所を忘れていました。
「そうだ、モヤイ像前って言ってたわ!」
それを横で聞いていたモヤイ像、間違いだよと伝えたいのですが、話すことができません。
しょせん銅像ですからね。
「このままだとケンくんに会えないな⋯⋯」
モヤイ像はモヤモヤします。
人々が寝静まった頃、モヤイ像は「うーん、うーん!」と自分の体に力を込めました。
するとどうでしょう。
ズズッ、ズズッ、とほんの少しずつ、深夜の街のなかを動き始めたのです。

次の日の朝。
「あれぇ、モヤイ像がない!?」
おろおろしていると、
「おーい、ミヨちゃーん、こっちこっち!」
と、遠くでケンくんの声が聞こえます。
そこには、ハチ公像と仲良く並ぶモヤイ像の姿がありました──。
ファンタジー
公開:19/10/29 14:26
更新:19/10/29 17:55

渋谷獏( 東京 )

(੭∴ω∴)੭ 渋谷獏(しぶたに・ばく)と申します。 小説・漫画・写真・画集などを制作し、Amazonで電子書籍として販売しています。ショートショートマガジン『ベリショーズ』の編集とデザイン担当。
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