泳げない人魚

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私は本当は人魚だ。
身の内にそれは間違いないという確固たる自信がある。
だけど同時に海が苦手だ。
お風呂は大丈夫。プールも。
底が見えない深い所が怖い。
きっと人としてこの世に長くいたせいで、体が人魚だと言う事を思い出ないでいるのだ。
他の人魚たちが暮らす深く遠い海の底まで辿りつけさえすればきっと、私の体も自分が人魚だと思い出せるはず。
そう思うのに結局今日も堤防から海を睨んだまま。
もしも思い出せなかったら、私は人のまま溺れて打ちあげられることになる。
それは醜いと思う。
人魚でありながら人として溺れて死ぬなんて。
「・・今日も大漁。」
ただ堤防でぼーっとしてるのももったいないと持たされた釣り竿で面白いように魚が釣れた。
体が思い出すまで、のはずの釣りでどれほどの恨みを買ったことだろう。
私は本当は人魚だそれは間違いない。
だけど戻れないのは溺れるからだろうか?
それとも・・。
ファンタジー
公開:19/10/29 12:49

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