節目の行方

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ぽこんと穴ぼこの開いたケースを前に、呆然と立ちすくむ。
……やられた。
予告状はあったのだった。つまり予告通りなのだった。
『あなたの節目いただきます。~怪盗ラパン』
ただ、欠片も本気にしちゃいなかった。

今世紀最初の怪盗だとか、いや快盗だとか騒がれる、神出奇没の泥棒だ。被害届が一件も出てないらしいので、何をどう盗むのか、皆目見当も付かないが。
やっこさん、俺のどんな節目を盗ったって?シャレでもあるまいに、丁度目玉が入るくらいの、蓋の開いたケース。思い当たる節もないのに(ここはシャレ)、わざわざ用意されると気になる。アルバムを引っ張り出し、電話の履歴や年賀はがきを漁り、数少ない知り合い連中の顔を浮かべる。今日、何かあったか?振り返っても予定表と一緒、まっさらだ。

それが無性に淋しい気がして、田舎の両親に連絡。
何もないから、たまには自分で作るか。次の日曜を、上京初の帰郷記念日に決めた。
ファンタジー
公開:19/10/28 22:53
更新:19/10/28 22:54
怪盗ラパン

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
前職は花屋。現在は葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書き(もどき)をしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.12執筆参加
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞。2022年6月アンソロジー出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞受賞

いつも本当にありがとうございます!

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