最後は渦の中。

0
4

人混みを歩くのにはコツが必要だ。
流れを読んで、時には自分の進みたい方へ流れを遮って。
身体中をめぐる血液かのように。
街を走る血管の中をぐるぐると、目的にめがけて進んでいく。

確かにどうしようもなく独りぼっちで。
どうしようもないくらい虚無だけど。
まあそれでいいのだ、僕はただ紛れ込んでしまいたいだけだから。
木を隠すなら森の中だなんて、よく言ったもんだろ?
僕もそんな風に溶けて消えたいのだ。

やりたいことも夢も希望もないから、考えなくていいように。
ごちゃごちゃした思考は、ごちゃごちゃの街に溶け流して。
僕は真っ白になりたいんだ。

そう思っていたのにどうして。
そもそもスクランブルだったこの街で、綺麗になろうとする方がおかしくて。

大都会の信号のど真ん中、真っ赤の僕が佇むんだ。
ホラー
公開:19/10/30 01:41

塚村( 東京のはしっこ。 )

学生時代、物書きになりたかった過去がありけり。
気まぐれに書いてみようと思いました。

コメントはありません

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容