宿六干し

11
11

さぁて鬼のおらぬ間に、今日こそ洗濯してやらにゃ。
うちの宿六のものぐさな事ったら。まぁ、人がちょいと宿下がり、したが最後のろくでなし……。えぇ『ものぐさ』過ぎて、鼻が曲がっちまいますよ。
ほぉら言わぬ事じゃない。布団は敷いたっきり、着物は脱いだっきり、隅につくねて、霧のお山のシケ模様。もう、洗い浚い、物干し竿にひぃらひら、と。……あら嫌だ、あたしの浴衣に湯文字まで引っ張り出しちまって、よっぽど着るに困ったのかしら。
男やもめに蛆が湧くってねぇ、うちの人みたいなのを言うんですよ。これじゃおちおち、里にも帰れやしない。……えぇ、ちり紙交換に出してやろうか。さっきも人の一張羅、涙と鼻水で台無しにしてくれて。
ほぉら、よしよし。泣かない泣かない。
湿りついで、これはお前さんのおしめにしましょう。
宿の六尺、赤鬼の越中、嬶の湯文字。果ては三途か川の字か。
本当に、今日はからっと干せた、良い天気だ事。
その他
公開:19/10/27 21:22
『御御御付』その後、嬶の話。 宿六(亭主)と 六尺・越中(褌) 湯文字は腰巻(女性下着)

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
前職は花屋。現在は葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書き(もどき)をしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
https://amzn.to/32W8iRO

ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.12執筆参加
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞。2022年6月アンソロジー出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞受賞

いつも本当にありがとうございます!

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容