辻の街

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 『辻』という言葉がある。
 いわゆる十字路のことだ。異なる道が交差したとき、果たしてその交点はどちらの道に属するのだろうか。あるいは、どちらの道にも属さないのかもしれない。だから異界との懸け橋となり、人ならざるものも通る。
 霊感、シックスセンス……言い方は様々だろうが、言葉の定義はどうでも良い。でももし、あなたがそういう能力を持っているのならば。逢魔――あなたはこの街で、それに注意しなければならない。
 渋谷は、辻を体現したような街だからだ。私鉄、地下鉄、JR……交わる電車の各線。そして行き交う人々、スクランブル交差点。だから逢魔の機会が増える。奇妙なものを見かけても、決して目を合わせたり、言葉を交わしてはならない。
 ◆
「――という訳だ」
「へえ、面白い話」
 突然話しかけてきた奇妙な和服姿の男は、どこか渋谷の街から浮いていた。その男の話に私は熱心に頷いた。――頷いてしまった。
ホラー
公開:19/10/27 15:55
渋谷

柊七十七

WEB小説執筆遍歴: エブリスタ(お休み中)→時空物語(サイト閉鎖)→ショートショートガーデン 現在に至る。

詩と、短編書きです。

#付きタイトル作品
幻想世界シリーズ: ひとつひとつは独立の世界です。日常のふとした思いや、ある日見た印象的な夢など。
ヒトのココロの暗い部分シリーズ: 暗い詩。

#無しタイトル作品
コンテスト参加用。

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