酸味のあるコーヒーは、もう飲めない
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「結婚することになったの、私」
君は僕の隣でコーヒーを美味しそうに飲みながら、何事でもないみたいに報告した。
「そう。おめでとう」
よかったね、相手はどんな人?聞きながら飲む、君と同じ種類のそれは酸味があって、まるで僕の後悔と罪悪感を喉の奥に流し込んでいるみたいだ。
「すごく優しくて、温かい人」君が愛おしそうに微笑む。「リサも早く結婚したい?でも理想高いもんなー。リサのタイプ、なんだっけ?左利きで、年収が高くて、三白眼で、文章が上手で、あと―」
「…可愛らしい人」
「ほんと、とりとめの無い好みだよねー」
でも、もう全部白紙にしてもいい。目の前の君は、今挙げた僕のタイプに自分が全て当てはまっているなんて気付きやしない。僕が女であるために、君を僕だけのものにすることはできなかった。
君が大好きな酸味のあるコーヒーの最後の一口を、君への愛おしさとともに飲み込んだ。
愛しい味。もう多分、飲めない。
君は僕の隣でコーヒーを美味しそうに飲みながら、何事でもないみたいに報告した。
「そう。おめでとう」
よかったね、相手はどんな人?聞きながら飲む、君と同じ種類のそれは酸味があって、まるで僕の後悔と罪悪感を喉の奥に流し込んでいるみたいだ。
「すごく優しくて、温かい人」君が愛おしそうに微笑む。「リサも早く結婚したい?でも理想高いもんなー。リサのタイプ、なんだっけ?左利きで、年収が高くて、三白眼で、文章が上手で、あと―」
「…可愛らしい人」
「ほんと、とりとめの無い好みだよねー」
でも、もう全部白紙にしてもいい。目の前の君は、今挙げた僕のタイプに自分が全て当てはまっているなんて気付きやしない。僕が女であるために、君を僕だけのものにすることはできなかった。
君が大好きな酸味のあるコーヒーの最後の一口を、君への愛おしさとともに飲み込んだ。
愛しい味。もう多分、飲めない。
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公開:19/10/27 10:43
書くことが好き。音楽方面のライターを目指しています。Twitter→@r_dorfer_
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