底で光る
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「こんな街、来なければよかった」
上京して、憧れていた渋谷でバイトを始めて、歓迎会を開いてくれて、その帰りで、こんなこと言いたくない。駅まで送ってくれている先輩に申し訳ない。
でも、舌が滑って止まらない。
「私なんか、田舎者まるだしって思われてそう」
「オシャレには自信あるんじゃねーの? ヘアメイクの専門学校に通ってるんだよな」
「そうですけど、可愛くてメイク上手い子ばっかりで、私なんか」
「その中で、プロを目指していくんだろ?」
こんな街。来なければ。
田舎で自分の才能に自惚れていられたのに。
「すいません、愚痴っちゃって」
黙った私に先輩は微笑んだ。
「渋谷で迷ったらさ、道を下っていくと駅に出るんだよ。谷底になってるから。迷って足掻いて浮上できない時は、底に向かって潜ってみれば出口に繋がることもある。愚痴なら聴くよ、いつでも」
坂を下りて先輩が指差した先に、渋谷駅の喧騒が光って見えた。
上京して、憧れていた渋谷でバイトを始めて、歓迎会を開いてくれて、その帰りで、こんなこと言いたくない。駅まで送ってくれている先輩に申し訳ない。
でも、舌が滑って止まらない。
「私なんか、田舎者まるだしって思われてそう」
「オシャレには自信あるんじゃねーの? ヘアメイクの専門学校に通ってるんだよな」
「そうですけど、可愛くてメイク上手い子ばっかりで、私なんか」
「その中で、プロを目指していくんだろ?」
こんな街。来なければ。
田舎で自分の才能に自惚れていられたのに。
「すいません、愚痴っちゃって」
黙った私に先輩は微笑んだ。
「渋谷で迷ったらさ、道を下っていくと駅に出るんだよ。谷底になってるから。迷って足掻いて浮上できない時は、底に向かって潜ってみれば出口に繋がることもある。愚痴なら聴くよ、いつでも」
坂を下りて先輩が指差した先に、渋谷駅の喧騒が光って見えた。
青春
公開:19/10/27 00:51
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