節穴人間

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「お前の目は節穴やな!」
と、長屋の大家が唐突に怒鳴った。

わしは内心、ギクリとした。
なんでバレたんや!?
いや、いや、そんなハズあらへん。
わしは自分の目が生まれつき節穴であることを隠すため、ちゃあんと定期的に目を入れ替えとる⋯⋯。
「⋯⋯」
今回もわざわざ闇市まで行って、イキのええ「節目」を買ったんや。
こいつを節穴に入れときさえすれば、まず「節穴人間」であるのがバレる心配はないはず。
「バレへんと思うたか!」
「はぁ⋯⋯」
大家はにやにやとしながら話を続けた。
「闇市で安モンを摑まされたんやな」
「と、言いますと?」
「お前さんの寝てるうちに、その節目の奴が一人でベラベラと話し出して、すっかりバラしよったんや!」
「ああ、なるほど、目は口ほどに物を言いますさかいなぁ⋯⋯」

わしは自分の節穴に指を突っ込むと、ギィギィと鳴く「両節目」を掴み出し、長屋の前のドブ川へと投げ捨てた──。
その他
公開:19/10/28 20:14
更新:19/10/29 13:30

渋谷獏( 東京 )

(੭∴ω∴)੭ 渋谷獏(しぶたに・ばく)と申します。 小説・漫画・写真・画集などを制作し、Amazonで電子書籍として販売しています。ショートショートマガジン『ベリショーズ』の編集とデザイン担当。
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