人の記憶を本にする技術

人体の一部から記憶を読み取り、それを本にする技術が出来て十数年。
警察は殺人事件の犯人を容易く突き止められるようになった。
遺族は隠し財産や隠し子等、亡者の秘密を暴き、遺産分与をスムーズに行うようになった。
今日、そんな人の記憶本を管理する会社の一つである我が社に一人の女性が現れた。
何でも先日遺体で発見されたホームレスが蒸発した父親ではないかと言う。
調べてみましょう。…そうですね。DNA鑑定の結果、貴方のお父様で間違いないと思われます。
身内の方であれば記憶本を読むことが許されます。こちらをどうぞ。
女性はページを捲る度に表情を厳しくさせた。
読み終えた女性は私に礼を言うと社を出て行く。
ちょっと待って下さい。
私は女性を呼び止め、一枚の紙を渡した。書店特典なんかにあるメッセージペーパーだ。
この紙にはお父様の貴方に対する想いが書かれています。
渡した紙を確認した女性は涙を浮かべた。