日光東照候群

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 ある男が日光東照宮に参拝に来ていた。彼は最近の政治家達に失望していた。だからこそ250年の治世を開いた徳川家康にお参りをしに来たのだ。
「どうかあなた様のような政治家が現れますように。」

 その晩、男の夢の中に大御所が現れて言った。
「なかなか得心な奴だ。お前に将軍家に伝わる力、日光東症候群を授けてやろう。」
「ありがとうございます。しかし名前からして病気ではございませんか。」
「安心しろ病と言っても日々の心がけのようなもの。是非今度の選挙に出馬してみると良い。」

 選挙に出た男は無名の新人との前評判だったが、選挙ポスターに写った彼の顔は、まるで歴戦の古狸。
 対立候補は次々と病死かスキャンダルで失脚し、あれよあれよといつの間にか国のトップまで上り詰めてしまった。
 そして総理大臣になった彼が掲げた目標は
「都合の悪いことは、見ざる、聞かざる、言わざる。」
 男の政権は末永く続いた。
ファンタジー
公開:19/10/28 16:35

はつみ

現実世界の2次創作
誰かに教えたくなるような物語を書きたいです

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