舌戦
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舌を噛んでしまったら、そのぼつりと開いた傷口から「私」の「本体」とやらがにゅるるるんと這いずり出てきた。それは興奮した様子で、もう行く出て行くんだと言う。まあ落ち着いて話を聞こう、行く行かないはそれからだと諭すも、わたしの勝手だ好きにさせろと聞く耳を持たない(耳は「私」のほうに付いている)。いいや勝手は許さない、これまで「私」らはきちんと働いてきただろう、そうでなければおまえは何もできなかったはずだ、と各部署が異議を唱える。
しかし「本体」は、わたしあってこそのおまえらだ、わたしが居なければ成り立たないだろうと嘲笑う。
そこで一番仲良くしていた脳神経でさえかちんときて、「私」を証明するのに指紋やDNAを使うだろう?病や怪我と戦えたのは誰のおかげだ?おまえがコントロールできたのか?と、これは今でも後悔しているのだが、激しい口論になってしまった。
後にはやはり、動かれない「私」だけが残った。
しかし「本体」は、わたしあってこそのおまえらだ、わたしが居なければ成り立たないだろうと嘲笑う。
そこで一番仲良くしていた脳神経でさえかちんときて、「私」を証明するのに指紋やDNAを使うだろう?病や怪我と戦えたのは誰のおかげだ?おまえがコントロールできたのか?と、これは今でも後悔しているのだが、激しい口論になってしまった。
後にはやはり、動かれない「私」だけが残った。
ファンタジー
公開:19/10/28 12:53
更新:19/10/28 19:32
更新:19/10/28 19:32
森絵都さんの『ショート・トリップ』が大好きです。
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