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僕の声は小さい。自分では大きな声ではっきりと話しているつもりなのだけれど、自分でも自分の声が遠くから聞こえてくるように聴こえるのだからもうどうしようもない。
多分、僕は遠いところにいるのだろうと、今では考えることにしている。だから、いくら大声で叫んでみたところで、相手には「声が小さい」と注意されるのだ。
それは身体の距離とは関係ない。話そうとする僕と、話す僕との心の距離の問題なのだと、カウンセラーは説明したが、それは今現在の天気を伝える天気予報みたいな感じがした。
「その距離を縮める方法はないのでしょうか?」と質問したら、カウンセラーに「ん?」と聞き返された。その時、「こんなことは無駄だ」という太い声がすぐ近くで聞こえたから、もうそこには通っていない。
それ以来、僕の中の、僕よりも僕の近くにいる敵味方不明の誰かに見つからないように、僕はそっと身を隠した。僕の声はますます遠くなった。
多分、僕は遠いところにいるのだろうと、今では考えることにしている。だから、いくら大声で叫んでみたところで、相手には「声が小さい」と注意されるのだ。
それは身体の距離とは関係ない。話そうとする僕と、話す僕との心の距離の問題なのだと、カウンセラーは説明したが、それは今現在の天気を伝える天気予報みたいな感じがした。
「その距離を縮める方法はないのでしょうか?」と質問したら、カウンセラーに「ん?」と聞き返された。その時、「こんなことは無駄だ」という太い声がすぐ近くで聞こえたから、もうそこには通っていない。
それ以来、僕の中の、僕よりも僕の近くにいる敵味方不明の誰かに見つからないように、僕はそっと身を隠した。僕の声はますます遠くなった。
青春
公開:19/10/25 18:41
星新一さんのようにかっちりと書く素養に乏しく、
川端康成さんの「掌の小説」のように書ければと思うので、
ショートショートとはズレているのかもしれないです。
オチ、どんでん返し、胸のすく結末。はありません。
400文字、おつきあいいただければ幸いです。
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