夢の節目

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 ――しまった。
 あんなに注意してたのに、俺は堕ちた。〝夢の節目〟に。

 俺が夢採りになると言った晩、親父は初めて俺を殴った。
「そんなことのために、お前を育てたわけじゃない」お袋は泣いてた。
 小さな夢問屋を経営する親父は、俺に後を継がせたいらしい。「現場を見下すな」と言い返したら、取引先の染夜工場で修行する羽目になった。

 人の夢を混ぜ合わせて、夜の帳を黒く染める染夜工。恋人の夢。空を落ちる夢。テストに遅刻する夢。色んな夢を混ぜるほど、夜は深く、美しい黒に染まって、また美味な夢を生む。
 工場には都会で採れた多種多様な夢が集まった。都会の夜は浅く、採れる夢は不味いが上質な染料になった。俺は工場で働くうち、余計に憧れを抑えきれなくなって、逃げた。

 浅い夜は節目が多い。〝夢の節目〟に堕ちたバクは、もう二度と帰れぬまま、ゆっくりと死ぬだけだ。
 お袋泣くかな。親父は、怒るだろうな。
ファンタジー
公開:19/10/25 18:22
更新:19/10/27 17:44
節目 染夜工(せんやこう)

10101298

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