羽根を埋める
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サハイさんは言った。
「羽根を埋める覚悟はあるのかい」
私は渋谷で自分の店をもちたいと、百軒店にあるサハイさんの不動産屋を訪ねた。
「どんな要望にも応えるけど条件がある。渋谷が好きで、羽根を埋める覚悟が君にあること」
サハイさんの囁きは不思議なほど胸に響く。羽根を埋めるとはこの街をもう離れないという意味だ。
サハイさんは百軒店の生ける伝説。控えめだけど存在感のある120才の紳士。店の創業は関東大震災の直後だという。巣箱みたいな小さな事務所で、いつも壁を背に、熱心に仕事をしているサハイさん。髪はブラウンマッシュルーム。毛皮のコートがよく似合う。
「どうするね」
サハイさんには私と同じシベリアのなまりがある。同郷の先輩として、この街で生きる覚悟を問うてくれている。
「変わり続ける街だからぶれない者にいてほしい」
サハイさんの言葉に私は背中の羽根を引き抜いた。この街が好き。もう渡り鳥はおしまい。
「羽根を埋める覚悟はあるのかい」
私は渋谷で自分の店をもちたいと、百軒店にあるサハイさんの不動産屋を訪ねた。
「どんな要望にも応えるけど条件がある。渋谷が好きで、羽根を埋める覚悟が君にあること」
サハイさんの囁きは不思議なほど胸に響く。羽根を埋めるとはこの街をもう離れないという意味だ。
サハイさんは百軒店の生ける伝説。控えめだけど存在感のある120才の紳士。店の創業は関東大震災の直後だという。巣箱みたいな小さな事務所で、いつも壁を背に、熱心に仕事をしているサハイさん。髪はブラウンマッシュルーム。毛皮のコートがよく似合う。
「どうするね」
サハイさんには私と同じシベリアのなまりがある。同郷の先輩として、この街で生きる覚悟を問うてくれている。
「変わり続ける街だからぶれない者にいてほしい」
サハイさんの言葉に私は背中の羽根を引き抜いた。この街が好き。もう渡り鳥はおしまい。
公開:19/10/25 13:50
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