旧共産圏高級官僚の告白

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薄暗いホテルの一室にその男は現れた。私は膝下のテーブルの上にICレコーダーを置く。男はその点灯する光を一瞥し、おもむろに話し始めた。

「3年前、私は国土産業省の事務次官をしておりました。私はその立場を使用して、申告のない商品の輸出入を指揮したり、公共事業の入札に便宜を図った見返りとして多額の現金を受け取っておりました。それは政治家も例外ではありません。今でもあらゆる所で汚職が蔓延しております。
でも、そんな国が国家として成立するわけはありません。経済は疲弊し、借金は増え、国は国民に多額の税金を課しています。言論や政治活動の自由を奪い、武力によって国民を弾圧しようとしています。あっ、集まって来ましたね」

窓を見下ろすと、ヴァーツラフドゥーギハチコウ前広場に巨大な人の群れが見えた。楽器をかき鳴らし、思い思いの衣装をまとった群衆が行進曲のリズムに合わせ、スクランブル交差点を渡り始めた。
ファンタジー
公開:19/10/26 22:36
渋谷

数理十九

第27回ゆきのまち幻想文学賞「大湊ホテル」入選
第28回ゆきのまち幻想文学賞「永下のトンネル」長編佳作
一期一会。
気の向くままに書いては、読んで、コメントしています。
特に数学・物理系のショートショートにはすぐに化学反応(?)します。
ガチの数学ショートショートを投稿したいのですが、数式が打てない…
書こうと考えてもダメで、ふと閃いたら書けるタイプ。
最近は定期投稿できてないですが、アイデアたまったら気ままに出没します。

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