人波
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チョコチャンは、いつものように窓の外をぼんやり見つめている。仕事中だというのに。お客のせいであんまりよく見えない、と零すのを制し、ぼくは近付いてきた客に笑顔を向ける。
店の外にも中にも人が溢れている。これもいつもと同じ。巨大なスクランブル交差点を渡る彼らは、オーシャンドラムの中に閉じ込められた粒々を思わせる。ざー、ばらばらばら。ざー、ばらばらばら。粒々たちは結局どこにも行けないような気がしてしまって、でも一粒落っこちたってなんともなくて、そんなことを連想してうんざりする。チョコチャンはよくこんなものを眺めていられるなぁと思う。
渋谷には強めの雨が降っている。ガラス張りのこの建物はずぶ濡れだ。車が飛沫をあげ、ざざんざざんと人が打ち寄せる、ここは本当に海なのかもしれない。
水がひとときもその場に留まれないように、何もかも入れ替わりが激しい街。こうして一緒に居られるのも、いつまでのことだろうか。
店の外にも中にも人が溢れている。これもいつもと同じ。巨大なスクランブル交差点を渡る彼らは、オーシャンドラムの中に閉じ込められた粒々を思わせる。ざー、ばらばらばら。ざー、ばらばらばら。粒々たちは結局どこにも行けないような気がしてしまって、でも一粒落っこちたってなんともなくて、そんなことを連想してうんざりする。チョコチャンはよくこんなものを眺めていられるなぁと思う。
渋谷には強めの雨が降っている。ガラス張りのこの建物はずぶ濡れだ。車が飛沫をあげ、ざざんざざんと人が打ち寄せる、ここは本当に海なのかもしれない。
水がひとときもその場に留まれないように、何もかも入れ替わりが激しい街。こうして一緒に居られるのも、いつまでのことだろうか。
ファンタジー
公開:19/10/26 21:01
更新:19/10/26 22:19
更新:19/10/26 22:19
森絵都さんの『ショート・トリップ』が大好きです。
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