夜の渋谷、君のために

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「渋谷は人が多い」
「うん、そうだね」
「どうにかならないの?」
「どうにかしてほしいの?」
「ええ、気が狂いそうだわ、これからここに毎日通うだなんて」
「渋谷に進学しようって方が悪いよ、それは」
「だって君がここにするって言ったんじゃない」
「それは僕がここに進学しかっただけだ。君に強制はしてないよ」
「…」
「まあいい。なんにせよ、これから君と僕はこの街に通う。そうだね?」
「ええ、そうね」
「君は人混みが嫌いだ」
「ええ」
「それで、人を減らしたい」
「ええ。…できるの?」
「君のためとなれば、いくらでも」
 君はきらびやかな渋谷の夜の空気を吸う。「今日はなんの日?」
「10月24日。…なんの日?」
「ハロウィンの一週間前。ちょっと早いけど、」そう言って君は牙を光らせて振り返る。
「忘れてない?僕は吸血鬼だよ」
そうして私に鋭い接吻を残し、君は私の要望を叶えに夜の渋谷に消えた。
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公開:19/10/26 18:30

書くことが好き。音楽方面のライターを目指しています。Twitter→@r_dorfer_

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