難しい恋人

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「ね、ここにあったリモコン知らない?」
そう無意識に声をかけてから、しまったと思った。彼に質問してはいけない。正確には質問してもいいのだが、問題がある。それも、なかなかの難問だ。
「知りたい?」
「あ、やっぱり大丈夫」
「そう?」
「うん」
そう答えて、慌ててリモコンを探す。ところが今日に限って探しても探しても見つからない。
「ああ、ドラマ始まっちゃう」
「知りたい?」
「え?」
得意げな彼。しかし彼に聞くには問題がある。ドラマの放送は刻一刻と迫っている。背に腹は代えられないと、私は彼に頼んだ。
「お願いします」
「じゃじゃん」
嬉しそうに彼はよどみなくこう述べた。
「任意の自然数nに対して『いずれもが素数のべき乗の形でないような連続するn個の自然数』が存在することを証明せよ」
「ごめんなさい、わかりません」
私は彼の懇切丁寧な解説を受けることになり、結局ドラマに間に合うことはなかった。
その他
公開:19/10/24 16:26

ささらい りく

簓井 陸(ささらい りく)

気まぐれに文字を書いています。
ファンタジックな文章が好き。

400字の世界を旅したい、そういう人間の形をしたなにかです。

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