うまみ
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どうしても再現できない味がある。唯一無二のあの味を寝たきりの夫に食べさせたくて、私は「宮廷料理じゃないほう」にアルバイトとして潜入した。
この店の味は私にとってどんぴしゃりの幸せがある。とりわけ小籠包の味はそれまでの価値観が崩壊するほどのおいしさで、飲茶の枠も柵も壁も越えている。
まっしろい小籠包の皮が床一面に敷いてある部屋に裸足で入ると、皮の表面には天然芝のような緑がやさしい風に揺れている。あまい天気雨に驚いたのもつかの間、虹がかかった室内は美しくきらめいて、私の心はうっとりとする。
ひと足踏むごとにずぶ濡れのスニーカーみたいに旨味たっぷりのスープがしみ出てきて、ちぎっては食べ、ちぎっては食べ、私はどんどん深みにはまってゆく。
めっきり人口の減ったこの町でナンバーワンの穴場な店。
どうしたらこんな小籠包を作れるのだろう。そう思いながら、私はどんどん包まれてゆく、包まれてゆく。
「あなた」
この店の味は私にとってどんぴしゃりの幸せがある。とりわけ小籠包の味はそれまでの価値観が崩壊するほどのおいしさで、飲茶の枠も柵も壁も越えている。
まっしろい小籠包の皮が床一面に敷いてある部屋に裸足で入ると、皮の表面には天然芝のような緑がやさしい風に揺れている。あまい天気雨に驚いたのもつかの間、虹がかかった室内は美しくきらめいて、私の心はうっとりとする。
ひと足踏むごとにずぶ濡れのスニーカーみたいに旨味たっぷりのスープがしみ出てきて、ちぎっては食べ、ちぎっては食べ、私はどんどん深みにはまってゆく。
めっきり人口の減ったこの町でナンバーワンの穴場な店。
どうしたらこんな小籠包を作れるのだろう。そう思いながら、私はどんどん包まれてゆく、包まれてゆく。
「あなた」
公開:19/10/24 13:54
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