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俺が生まれ育った海辺の街に、古い喫茶店があった。普通のコーヒーに、普通のハムサンド。それでも『雨の渋谷の映る窓』という店の名前が好きで、よく通った。
店の窓越しに海を眺めながら、普通のスクランブルエッグをフォークで刺したり、未だ見ぬ都会に憧れたりした。
俺は今、シブツタ前にいる。目の前にはあのスクランブル交差点。俺は数日も前から、ずっとここにいる。
俺は念願の渋谷観光を終えてそろそろ帰ろうと、スクランブル交差点を渋谷駅に向かって渡っていた。はずだったのだが、人の波を避けながら渡り終えてみると、なぜか元のシブツタ前にいた。
「アッフ」
俺は腰が震えて、思わず吐息を漏らした。
もう一度横断を試みた。信号が青になる。自然に、あくまで自然に。決して意識せず。駅の方へ、駅の方へ。――目の前にシブツタがあった。
「ハゥフッ」
俺は漏らし、スクランブルした。それからずっと繰り返している。
店の窓越しに海を眺めながら、普通のスクランブルエッグをフォークで刺したり、未だ見ぬ都会に憧れたりした。
俺は今、シブツタ前にいる。目の前にはあのスクランブル交差点。俺は数日も前から、ずっとここにいる。
俺は念願の渋谷観光を終えてそろそろ帰ろうと、スクランブル交差点を渋谷駅に向かって渡っていた。はずだったのだが、人の波を避けながら渡り終えてみると、なぜか元のシブツタ前にいた。
「アッフ」
俺は腰が震えて、思わず吐息を漏らした。
もう一度横断を試みた。信号が青になる。自然に、あくまで自然に。決して意識せず。駅の方へ、駅の方へ。――目の前にシブツタがあった。
「ハゥフッ」
俺は漏らし、スクランブルした。それからずっと繰り返している。
青春
公開:19/10/23 22:52
新出既出さんオマージュ
『雨の渋谷の映る窓』
パロディ「の男」
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