真葛茂れる

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――ここも埋もれてしまった。
私は当ての外れた落胆と空きっ腹を抱え、転んですり剥いた指の爪を噛んだ。
つい去年まで、柿の木が大きな実を付け、通り掛かる度に登り、幾つも捥いでは齧ったものだった。たわわに生る葡萄色は、食べられもしない花房。クズとはよく付けたものと、ささくれた気持ちで悪態を浮かべる。粉にして餅を作るそうだが、私はそのやり方を知らない。
みし。みしり。無数の葉に覆い尽くされた中で、枝のしなりが響く。遠からず折れて枯れ朽ち、やがては木のあった事すら忘れ去られてしまう。手入れがなっていないと持ち主の怠慢を恨み、ぐるりを見渡して寒くなる。
白に降り込められる前に、辺り一面は緑の洪水。山上の痩せ木は食べてしまい、平地はクズに呑まれ。翌春の芽吹きを、私は生きて迎えられるのか――。

りん、不意に高い音がする。
恐いもの?否――やり方次第では食べられるものだ。
私はゆっくり、黒い爪を砥いだ。
その他
公開:19/10/23 22:26
葛(くず)

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
前職は花屋。現在は葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書き(もどき)をしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.12執筆参加
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞。2022年6月アンソロジー出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞受賞

いつも本当にありがとうございます!

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