節芽の茶

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うちの畑に、一本だけ茶の木があり、毎年、新時に祖父が摘んだ葉を、祖母が煎茶に作り、家族の記念や行事日に、皆で飲むのを習いにしていた。
『我茶(わぁのちゃ)』と称ぶそれは、子供の舌には渋く苦く、私や兄弟らは好まなかった。柔らかい芯葉だけでなく、中程の育った葉、付け根に近い固い所まで摘むので、どうしても雑味が入る。縁起物だからと含まされては、よく影で舌を出した。

茶作りが父母の仕事になる頃、辟易した私は、つい苦り口をこぼした。
「せっかくなら、良いとこだけ使えば?」
「人生、良いとこ取りは出来んのよ」
笑って答えたのは、仏間の祖母だった。
「一節芽は子供。二節芽は親。三節四節が爺婆。人が一代立てる時は、色んな節を取って、色んな味、飲んでかにゃならんの」
仏壇から下げた湯呑みを呷り、ふうと吐いた息で、位牌が曇る。
お鈴の音と、線香の匂いと共に噛み締めた我茶は、やはり渋くて、喉と腹に温かかった。
その他
公開:19/10/24 21:39
節目 茶摘み

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.13執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞

いつも本当にありがとうございます!

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