丑の刻参り

深夜1時。手にした藁人形を、金槌と五寸釘で神社の木に打ち付けている。
こんな時間にこんなことするのは怖い。
けれど、ものすごく殺したい奴がいる。だけど、直接殺す勇気なんてない。
だから、こうして呪い殺すしかない。

打ち続けていたら、後ろの茂みで物音。
ぎょっと振り返ると、逃げていく誰かの背中が見えた。
見られた。どうしよう。丑の刻参りは人に見られると、呪いが全部自分に返ってきちゃうんだ。
そうしないようにする方法は、一つしかない。
全力で、逃げる背中を追いかけた。今までこんなに走ったことはないと思うくらいのスピードで追いかけた。
そうして、追いついた。
逃げ続ける後頭部を、金槌で力の限り殴った。
気が付いたら、逃げていたあの人は倒れていた。ちゃんと死んでいた。
…なーんだ、人を殺すのって、案外簡単。
これなら、わざわざ呪わなくても直接殺したほうが早そう。
金槌を強く握りしめた。