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5年前に死んだ父宛に「レンタル倉庫の更新のご案内」が届いた。といっても僕は父を知らない。僕が生まれる前に家を出て、死んで戻ってきた男のことなんて……
僕は母に内緒で倉庫会社に出向いた。
荷物は大量の雑誌だった。週刊誌、月刊誌。アイドル誌、アダルト誌。ゴシップ誌。表紙に踊る「袋とじ」の煽り。それは父の「袋とじ」コレクションなのだった。だが「袋とじ」は全て未開封のようだ。
僕は母に尋ねようとスマホを取り出した。そのとき母から聞いた父の信条が頭をよぎった。
「簡単に答えを出そうとするな。あらゆる可能性を楽しめ」
父さん……
僕はなんだか悔しかった。あなたは唯一無二の現実から逃げただけなのではないですか?
僕は業者に雑誌の査定を頼んで帰った。
数日後、業者から小包が届いた。「買取不可返品」
荷物は、結婚前に母が父に書いた封書の束と、一部が袋とじになっている母の見合い写真だった。
僕は母に内緒で倉庫会社に出向いた。
荷物は大量の雑誌だった。週刊誌、月刊誌。アイドル誌、アダルト誌。ゴシップ誌。表紙に踊る「袋とじ」の煽り。それは父の「袋とじ」コレクションなのだった。だが「袋とじ」は全て未開封のようだ。
僕は母に尋ねようとスマホを取り出した。そのとき母から聞いた父の信条が頭をよぎった。
「簡単に答えを出そうとするな。あらゆる可能性を楽しめ」
父さん……
僕はなんだか悔しかった。あなたは唯一無二の現実から逃げただけなのではないですか?
僕は業者に雑誌の査定を頼んで帰った。
数日後、業者から小包が届いた。「買取不可返品」
荷物は、結婚前に母が父に書いた封書の束と、一部が袋とじになっている母の見合い写真だった。
その他
公開:19/10/22 09:54
シリーズ「の男」
星新一さんのようにかっちりと書く素養に乏しく、
川端康成さんの「掌の小説」のように書ければと思うので、
ショートショートとはズレているのかもしれないです。
オチ、どんでん返し、胸のすく結末。はありません。
400文字、おつきあいいただければ幸いです。
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