シブヤ・スカイハイ

　かつては歩行者天国だったが、今は違う。
　それを一時、車と人の流れをせきとめて、渋谷駅でスタートの合図が鳴った。
　沸き上がった鬨の声は、何色あっただろう。無数、としか言えない。

　集ったプレイヤーの靴にはどれも、ジェット機構とローラーがついている。
　一斉に、弾けるように走り出す。

　そぞろ建つビル群の全ての外壁には、垂直の、空へ向かう滑走路が取り付けられていた。
　――東急、西武、Qフロント
　プレイヤーたちは次々と、滑走路のレールに靴底のローラーをはめて、
　――109、マルイ、タワーレコード
　弾丸のように空へ駆け上がっていく。
　――マークシティ、パルコ、ヒカリエ
　ドローンを飛び越え、ヘリに手を振り、誰よりも高く、その先へ。

　男も、女も、どこの誰でも。
　見たことのないものを見に行ける。
　谷底の風は空へ噴き上がる。
　総てが始まり、終わらない。