オシダ湿布、或いは原罪を宿して

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オシダ博士のところに、一通のメールが届いた。
『拝啓、オシダ博士様
私は現在妊娠三ヶ月です。陣痛の痛みが怖くて仕方ありません。博士のお力で安全に無痛で出産させる何かを作って頂けないでしょうか?』
博士は研究に籠った。
半年後、陣痛がやってきてもすぐに腰に貼れば、無痛で赤ん坊も押し出してくれるという湿布がついに完成した。
『オシダ湿布です』と手紙を添え、博士は女性に送ってあげた。

博士のところに改めて彼女からメールが届いた。さては感謝のメールかな、と博士思った。
『博士、オシダ湿布のおかげで私は無痛で子を出産できました。そのことは非常に感謝しております。しかし、子どもがずっと泣き止みません。やっと最近言葉を話せるようになってきて、理由がはっきり分かりました。

最初の言葉が『腰が痛い』だったのです』

博士は文字通り、赤子と一緒に痛みを押し出してしまったのでした。
SF
公開:19/10/20 22:12

冨田亮太( 東京・埼玉 )

雰囲気重視。

 

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