節目薬(ふしめぐすり)

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買い出し後、荷物を片付けていて気付く。
薬局で買ったばかりの『新年』がない。鞄を探ると、ポケットに穴。落としてしまったらしい。
大ショック!改元最初のプレミア、予約販売で買ったのに……。今年は『夏』を買い過ぎて長びかせ、『秋』も余り気味。いっそ『冬』で乗り切るか?毎日差すので、地味に家計にひびく。
環境破壊と異常気象の成れの果て、ドーム都市での生活を余儀なくされた人類が、自然の温度や季節を感じる事は、もう出来ない。せめてもの代替に売り出されたのが、節目薬。日に一回点眼すると、網膜から大脳に吸収され、感覚神経に季節を疑似体験させる。年じゅう快適なドームにいて、あえて不便を求めるのも妙だが、やはり変化のない日常は淋しいものだ。

落ち込んでいたら、玄関でチャイム。
薬局の人だ。置き忘れて帰ったのを届けてくれたのだ。

……しかし、結局『新年』は使わなかった。
代わりに今、『新婚』を使っている。
SF
公開:19/10/20 18:11
※画像は『秋』タイプです(笑)

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
前職は花屋。現在は葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書き(もどき)をしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.12執筆参加
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞。2022年6月アンソロジー出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞受賞

いつも本当にありがとうございます!

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