彼はドライバー

秋のある日。私たちは、東北へ向かっている。常磐道から磐越道を通り、東北道に出た所だ。

私は、今日も彼とドライブだ。

「はぁ、俺はどうしたらいいんだ」

どうやら、仕事で理不尽なことがあったみたい。

「なぁ、お前はどう思う？機嫌が悪いからって俺に当たらないでほしいよな」

そうだね、私もそう思うよ、と言いたいけれど、あなたに伝えることはできない。

「独り言ばかり喋って、側から見たら頭がおかしい人だよな」

独りじゃないよ、私は聞いているよ、と言ってあげたい。

「はぁ、もう全部投げ出してやりたい」

そんな日もあるよ、気持ちを切り替えてまた頑張ろうよ、と慰めてあげたい。伝えられない事に、私は何度憤っただろう。

「仕方ない。また気持ち切り替えて、頑張るか！」

私の少し気持ちが伝わった気がして、なんだか嬉しくなった。

私は社有車。届く事のないこの想いを胸に、今日も彼と走っていく。