明暦大火異聞

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少女の一途な想いは“こい河岸”で鯉を求めさせた。竜吐水(りゅうどすい)ができる100年前のことである。

本妙寺に縁がある梅乃、きの、いくにまつわる振り袖は供養のために燃やされたが、“こい河岸”で鯉を求めた、それ以外の少女の中に、彼女たちとは異なる図柄の振り袖を手にしたものがいたらしい。

その名をつるという。

本所深川の小さな小間物屋の娘で、屋号を「蝦の屋」と称した。

彼女は大火には遭遇したが、一命をとりとめ、やがて大店のひとり息子と夫婦(めおと)になり子宝にも恵まれ幸せな余生を過ごしたという。

その男は泰三といった。

つるの振り袖は鯛ではなく海老を図柄にした地味なものだった。

これを聞いた江戸の庶民は口々に噂した。

「海老で鯛を釣る」

まさに異聞である。
ファンタジー
公開:19/10/20 17:41
更新:19/11/26 19:24
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武蔵の国のオオカミ( ここ、ツイッタランド、タイッツー )

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