花嫁を飾るレターセット

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「今日、わたしはお父様とお母様から巣立ちます」
 そう書き綴られた姉のレターセットは、それはそれはうつくしいヴェールに変化した。
 ヴェールを纏った姉はとてもうつくしかった。幸せそうだった。
 ……でも。
「今日、わたしはお父様とお母様から巣立ちます」
 同じ文を綴ったはずなのに、わたしの気持ちは雨雲に覆われているようだった。
「さあ、行こうか」
 婚約者がわたしの手を取る。レターセットから出来たヴェールを被せる。
 そのときだった。ヴェールは翼になった。
「待て!」
 ヴェールはお父様のいうこともお母様のいうことも、婚約者のいうことも聞かずにわたしを空へと連れ去った。わたしの脳裏に浮かんだのは、婚約者とは違う色のひとみを持った彼。
「! きみは、結婚するんじゃなかったのかい」
「ねえ、わたしは」
 あなたのことが。
 翼のヴェールは、姉のものに負けないくらいうつくしいものになっていた。
ファンタジー
公開:19/10/20 17:25

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