作家がいる天使

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「僕はあなたから生まれた天使です」
 少年の姿をした誰かは、そう言ってわたしに笑いかけた。
「天使?」
「はい! 天使は人間の良心から生まれるんです。僕はあなたの良き心から生まれたんですよ」
 にこにことわたしに笑みを向ける「天使」に、足元に落ちていた空き缶を蹴り投げた。空き缶は天使には当たらず、すり抜けて向こう側の壁にぶつかった。
「わたしがいい人間のはずない」
「そんなことないですよ」
 天使は、笑った。
「さっき、助けたでしょう?」
「なにを」
「看板です」
「は、」
 確かに倒れていた看板を起こしたが、それだけ。それだけだ。
「優しいあなたに、祝福を」
 優しいなんて、言うな。わたしは、優しくなんてない。
 天使はいつの間にかいなくなっていた。夢だったのだろうか。
 嫌な夢を見るものだ。わたしは、渋谷の街を歩く。ふと、倒れた看板を見つけた。わたしはなんの気もなしに、それを起こした。
ファンタジー
公開:19/10/20 16:40

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