公園通り

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渋谷の人混みに疲れ、カフェで休むことにした。
窓が大きなオシャレなお店。
モンブランのケーキと紅茶のセットを頼む。
バッグから取り出した小説に目を落とすが、内容が入ってこない。
ため息を吐き、顔を上げたところに店員さんが「お待たせしましたー」と笑顔でセットしていった。
紅茶をポットから移し、フォークを手にケーキへ取りかかる。
少しの抵抗を感じたそれは、口に入れると生クリームの甘さと栗の渋みがいい塩梅で、幸福感に満たされた。
私って安っぽいなと苦笑した。
ガラス越しの女子たちは、キラキラして見えた。
さっきまで、あの中に私もいたのに。
なんとなく、レジ横のクッキーを一緒にお会計する。
暮れなずむ街でも、人並みは途切れない。
公園通りを帰ろうと、進み出したとき「わあ」と声が上がった。
「もうこんな季節なんだ」
街路樹が作る青い標。
下を向かずに歩み出せと励まされているよう。
「安っぽいな、私」
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公開:19/10/21 21:57

ibara_hime

文章を削る練習をしています。
妄想は得意。感想は苦手。   ・・・・・・です。

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