あの時の音色

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18歳。俺はミュージシャンになるために家を飛び出した。
あれから5年。俺は夢破れ、実家に戻ってきた。
家族になんて説明しよう…項垂れ、玄関前で佇んでいると最悪なことに親父と出くわした。
親父は俺に「ついてこい」と言った。
入ったのは小さな喫茶店だ。そこで俺は家を出てからの5年間を親父に話した。
必至に頑張ったが芽が出る様子はない。だから夢を捨てて帰ってきた。
親父が口を開く。
「お前が家を出た日のことは今でも覚えている。あの日のお前は輝いていた。だが今はその輝きがない。そんな今こそ頑張り時だ」
何故だ?
「ミュージシャンとは狭き門。音で食っていくには暗い時代もあるだろう。だがそんな時こそ目を瞑り、深呼吸をして周りの音に耳を傾けろ。闇の中に活路はある。門の中に音アリだ」
親父はそう言って俺を再び送り出した。
ありがとう。俺、もう少し頑張ってみるよ。
親父に教えて貰った音色は今も俺の中の光だ。
公開:19/10/21 18:40

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

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