キャッチ&リリース

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夜のスクランブル交差点に浮かぶ一万円札や宝石達。金目の餌を結んだ釣糸が、QFRONTの屋上から照明の光をキラキラ反射させて垂れていた。

階段で屋上にあがると、餌を咥えた男性がおばさまに首根っこを捕まれていた。

「いまいちね」

男性は屋上から放り出されると、明るい夜を泳いでいった。

私は屋上の縁から足を下ろし、かつて縁日で買ってもらったオモチャの指輪を釣糸にくくりつけた。スイッチを入れ、指輪が点滅すると交差点に向けて竿を振った。

ぼんやり月を見ていると竿が揺れた。私は落ち着いてリールを巻いた。

「お父さん」

十年前、家を出た父の足には小学生くらいの女の子がしがみついていた。私は二人をそばに下ろし、来週結婚することを父に伝えた。父は満面の笑みを浮かべたものの、言葉は無かった。

「バイバイ」

私は屋上から父をリリースした。女の子は父にしがみついたまま、チラリと私を見た。
その他
公開:19/10/21 08:58
更新:19/11/13 23:21
渋谷

イチフジ( 地球 )

マイペースに書いてきます。
感想いただけると嬉しいです。

とりあえず、100話と、お気に入りにはいる作品を作ることを目標にする

94 ○バヤシ

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