交差点に星が降る

6
7

スクランブル交差点のど真ん中で転んでしまった私に差し出された手。彼の手を掴んだ刹那、時が止まる。空から赤青桃黄緑、色とりどりのキャンディがバラバラと降ってくる。彼は口笛を吹きながら私の手を取って踊った。透明な美しい翅の妖精もくるくる廻る。鼓膜を震わす鈴の音。しとしと降り始めた細い柔らかな雨。空を見上げる。頬にはりつく髪を彼が優しく梳いた。淡い紫のユニコーンが駆けてくる。「私に祝福を与えて」たちまち雨は止み凛とした空に天使が梯子を作る。その真っ白な羽根!ビルの窓に映るマーメイドがジャンプして飛沫を飛ばす。「ほら、渋谷に星が降るよ」彼の言葉通り幾筋も幾筋も星が流れた。虹色の宝石みたいに輝きながら降り注いだ。星は確かに生きていた。
動き出す雑踏の中、彼はもういなかった。私は持っていたタピオカミルクティーを飲み干すと駅に向かった。輝きを放つ渋谷のネオン。私の胸に息づいた星も、静かに熱く輝いていた。
ファンタジー
公開:19/10/19 11:13
更新:19/11/07 21:28
渋谷

深月凛音( 埼玉県 )

みづき りんねと読みます。
創作が大好きな主婦です。ショートショート小説を書くのがとても楽しくて好き。色々なジャンルの作品を書いていきたいなと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。
猫ショートショート入選『ミルク』
渋谷ショートショートコンテスト優秀賞『ハチ公、旅に出る』
ベルモニーPresentsショートショートコンテスト[節目]入賞『私の母は晴れ女』
ベルモニーPresentsショートショートコンテスト[縁]ベルモニー賞『縁屋―ゆかりや―』

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容