単身赴任

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緊急集会が村の長者の家で行われる。夜道を行く、重い足取りの女。
空には、月のような星が輝く。女は、それを恨めしげに見た。

その星へ今、夫が単身赴任している。
女は反対した。けれど、ここ数年で激変したこの国が許さなかった。
技術革新と宇宙を含めたグローバリゼーションの波は、宇宙と関係ないはずの田舎をも巻き込んだ。長者に頼まれ、夫は宇宙へ行った。宇宙戦争へ。

噂だが、敵は野蛮。戦場で切り取った首の数を自慢しあう種族らしい。
争いが調停で片付くこの月とは大違い。
稲を愛する夫が、そんな敵を相手に、生き残れるとは思えない。

長者の家に着くと、なんと夫がいた。夫と一緒に宇宙に行った村民達も。
聞くと、味方の損害はゼロで、人質の奪還まで成功させたそうだ。人質の名は、かぐや姫。

長者は、その夜、皆を労う祭りを催した。
パレードする月を、地球人たちは今頃、どんな思いで、見上げている事だろう。
その他
公開:19/10/19 05:12
更新:19/10/30 20:38
#スクー #パレードする月

久保田 人月

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