SHIBUYA SEIN UND ZEIT

2
5

平均的日常における俺はオンラインで頽落している。
「つまらない好奇心をテーマとした他者とのSNSなど空談に過ぎない」
彫りの深いおまえの表情は読みにくい。
「俺は自己の在り方を問題とし、自ら求めるところに即して開示される渋谷を感じたい」
歩きスマホの若者を、爆音の街宣車が追い越していく。ポップカルチャーに吸収された誰もが無力だ。
「いずれ未了のまま死にゆく不安を引き受ける。それでも存在する限り、全ての可能性を探りたい」
俺は腕時計を確認してからモヤイを思いきりぶん殴る。野太い声が響きわたった。もちろん俺の雄叫びだ。
小さな手が俺の肩を叩く。振り返れば人差し指が頬を突いた。
あの時、思い切って「会いたい」なんて返信をした。本名も顔も知らない。今思えば性別も年齢も。「来週の正午、モヤイ像を思いっきり殴ってみて」そんな言葉が返ってくるとは思わなかった。
クスクスと心地よい笑い声が耳をくすぐった。
恋愛
公開:19/10/19 22:13
更新:19/10/19 22:14

puzzzle( 神奈川19区 )

作文とロックンロールが好きです。
https://twitter.com/9en_T

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容