喧騒

1
4

なんの匂いもしない。
音も聞こえない。
こんなに人は多いのに、物は多いのに。
物悲しさだけを詰め込んだ、冷たい場所“シブヤ”。
大都会で、多分僕は。ここよりもゴチャついた場所を知らない自信すらあるのに。
なぜだろう。
僕の目に映るのは風のように透明だ。

実家に住んでいた時は、こうじゃなかった。
天気が変わっただけで匂いがした。
なにもなくても音が聞こえた。
だのに今は全て存在“しない”。
強いて言うなら手元のコーヒーくらい。
…コレだって黒くてなんだかなぁ。

信号が変わる、ああ歩かなきゃ。
人にぶつかってしまった謝れるかな。
それ以前に僕の声は、音になるのだろうか?
音の死んだ場所で。
香りの死んだ場所で。

君は微笑んだ、
「コーヒー美味しそうね、」
ファンタジー
公開:19/10/19 20:36

塚村( 東京のはしっこ。 )

学生時代、物書きになりたかった過去がありけり。
気まぐれに書いてみようと思いました。

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容