イヤホン

「それでは次の人どうぞ」
僕はナースに呼ばれ、ゆっくりと腰をあげた。
隣に座る男性が、次は自分の番だと確認するようにチラリとこちらを見る。
大きなヘッドホンをつけている大学生くらいの若者だった。
僕は軽く会釈し診察室に入った。

「先生、どうですか？」
「これはひどいですね。なんでここまで放っておいたんですか？」
医者は顔をしかめながら答えた。
「来なきゃ来なきゃと思ってはいたんですけど......」
「最近多いんですよ。イヤホンと耳が一体化しちゃう人。無線のBluetoothイヤホンが増えたでしょ。だから一日中イヤホンをしている。朝起きて寝るまで、人によっては寝ている時もつけているんですよね。」
僕は医者の話を聞きながらふと思った。
もしかしてあの若者も......。