ゾンビ認定試験

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その患者さんは、お風呂に入ってないのか少し臭かった。
「あら、ここもダメねぇ」
採血すらできないなんて腕が落ちたなと思う。50歳を過ぎての看護師復職。
「だから、無理なんですって」
患者さんは臓器も血液も売ったと言う。
「じゃああなた、どうやって生きているんです」
押し問答していたら、チーフが慌ててやってきた。
「その患者さんはゾンビ認定試験の為の診断書もらいにきたんですから、採血は要らないんですよ」
あ、そうか、ゾンビ認定試験だ、と思い出した。臓器と血液を売って、政府の開発した薬を打つと、人間は不死のゾンビとして生き返る。その後、認定試験を受けると『Z型特別国家公務員』になれる。危険な作業が伴う様々な職場で雇われ、一生が保証される。デメリットは子供が産めなくなることと、体臭が強くなることだったか。
「これからは気をつけて下さいね」
そう言ったチーフからはゾンビの患者さんと同じ臭いがした。
その他
公開:19/10/18 10:55
更新:19/10/18 16:10

深月凛音( 埼玉県 )

みづき りんねと読みます。
創作が大好きな主婦です。ショートショート小説を書くのがとても楽しくて好き。色々なジャンルの作品を書いていきたいなと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。
猫ショートショート入選『ミルク』
渋谷ショートショートコンテスト優秀賞『ハチ公、旅に出る』
ベルモニーPresentsショートショートコンテスト[節目]入賞『私の母は晴れ女』
ベルモニーPresentsショートショートコンテスト[縁]ベルモニー賞『縁屋―ゆかりや―』

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