日本橋魚河岸奇譚

4
6

江戸時代初期、日本橋周辺には魚河岸(うおがし)が並び活況を呈していた。その中にひそかに“こい河岸”と俗称される地域があり、そこで鯉を買うと素敵な恋ができると、江戸の町娘の間では噂になっていた。

これも噂の域を出ないが、あの明暦の大火の別名の由来となった振り袖を買った娘も、ここで鯉を求めたとも言われている。最終的な結果として彼女の恋は叶わなかったわけだが。

また、鯉は出世してやがて龍になると信じられていたことから、それを模した竜吐水(りゅうどすい)という消火用ポンプを扱う火消したちの間で“こい河岸”の鯉が求められたのは、その百年後のことである。

大火以降、悲恋のこともあり、娘たちの間では件の噂は下火になっていった。

日本橋は水運の利があり、淡水のものも海水のものも手に入る。その結果、恋する江戸町娘たちの間では、少々値は張るが鯛が求められるようになった。

こい河岸鯛。
ファンタジー
公開:19/10/16 18:01
更新:19/11/26 19:22
117 オオカミの自信作

武蔵の国のオオカミ( ここ、ツイッタランド、タイッツー )

武蔵の国の辺境に棲息する“ひとでなし”のオオカミです。

ツイッター
https://mobile.twitter.com/ookami1910
タイッツー
https://taittsuu.com/users/ookami1910/profiles

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容